シマニテ・ログ 【タビノタヨリ】LETTERS 04
花と海をめぐる旅
踊子歩道

湯けむりの町を離れ
静かに天城路に入る
苔むす石の道

木々の梢をわたる風
遠い日の若き旅人の影が
今もどこかを歩いている気さえする
谷の風に笛の音がまじり
峠の向こうで波が光る
道はやがて下田港へ

あの日の踊り子はもういない
けれど
あの物語の余韻だけが
凛としてつつましく咲く椿のように
今も静かに胸の中で揺れている

縦の糸と横の糸
新たな旅のはじまりは、一枚の着物だった
あの日、伊豆の踊り子の少女が
港で揺らしていた袖に
島の静かな時間をたたえた生地があった

それが、黄八丈
縦の糸と横の糸が重なるたび
人の手と自然の息づかいが出逢い
ひと織り、またひと織りと
時間と記憶が織り上げられていく・・・

一枚の布に思いを馳せ
物語の続きを探すように
こころは空へと向かった

緑の大地からの贈り物

雲を越え、海を渡り、
たどり着いたのは
緑あふれる八丈島

潮をふくんだ風が
緑の大地を そっと撫でていく

そこには 力強く伸びる明日葉

摘まれても、また明日、芽を出す
いのちの約束
明日葉は 今日も語りかける
それは
― 今日を越えていく力。
― 明日という季節が、今日の大地から生まれてくるということ。
目覚めの春
いま、春の光のなかで
土は静かに息を整え
眠りから目を覚ますように
フリージアがそっと顔を上げる

黄色、白、紫 ―

それぞれの花が
ずっと変わらない何かを確かめるように
やさしく咲きはじめる
― 冬来たりなば 春遠からじ
薫り立ち咲き誇る花々たちもまた
口を揃えて そう語りかけ
わたしたちの心を 解きほぐそうとしている
人の心にも同じように春が訪れる
言葉にならない日々を超えて
ふとした瞬間に、やわらかな灯りがともる

緑の大地の奥から芽吹く
「再生の物語」は
草花に、生きる強さと意志を託して
今、確かに 時を紡ぎ
未来を、織り始めているのです



