シマニテ・ログ 【タビノタヨリ】LETTERS 07
神の旅路 伊豆白浜編
物語が重なるとき
太古の昔、
はるか南の沖で
一つの島だった伊豆が
地の奥にひそんだ力に導かれ
ゆるやかな歳月だけを道しるべに
海を渡り
海深く秘められた火が
新たな大地と出会った物語。

時満ちて、息を吐き
波の間から大地を押し上げ
島として、この世にかたちを得た物語。
それぞれの大地の物語に心を寄せるとき
おのずと、そこをかたちづくる
あらゆる自然の根底にしるされた神の足跡に
想いを重ね合わせずにはいられなくなる。
心の目的地
南よりめぐり来る、碧き海の道
それは神の旅路だった・・・

伊豆のかなた南、三宅の海を出た三島大明神
あたたかき潮の流れに身をゆだね、
北へ、北へと向かい
最初にたどり着いたのは
風と白砂が待ちわびる潮騒の地、伊豆の白浜
そこは時の粒がきらめいて広がる無垢の岸辺

島々を創る
白浜の地にいざなわれ、
心赴くままに行き着いた神は
やがて富士の神の許しを得て
伊豆の土地を譲り受けると
沖合に
ひとつ、またひとつと
一日一つずつ十の島を創り名付けた
第一の島 初島
第二の島 神々が集う島 神集島

第三の島 最も大きな島 伊豆大島

第四の島 島の色の白さゆえにあたらしい島(新島)

第五の島 三つの家が並んでいるように見える島 三宅島

第六の島 明神の蔵を置くための島、御蔵島
第七の島 はるか沖にある島 沖ノ島(八丈島)

第八の島 小島(八丈小島)

第九の島 王の鼻のようなヲウゴ島(青ヶ島)
第十の島 十番目の島 十島(利島)

― そうして連なったのが、伊豆諸島
名もなき深海の底に秘められていた記憶を
火の力で地上に引き上げ、
息を吹き込んだ
神の足跡
島ごとに愛を残し、命を宿し
そこにしるされた名は
風となり、大地となり
そこに根を下ろす
すべての生きとし生ける者たちへ
命の脈動を授けたのである
〈旅のメモ〉
・三島大明神は伊豆半島と伊豆諸島の火山にゆかりのある神様
・伊豆諸島ではそれぞれの島に大明神の后神(妻)や御子神(子)が祀られている
愛おしい想いで
遠く、はるか遠く。
島を創る旅路の果て
神はなつかしい記憶の岸へと還りゆく

そしてふたたび
何ものにも代えがたい思い出の記憶を
たぐり寄せ、織り合わせた・・・
神の旅路のもう一つの原点

― それが、伊豆白浜
そこは海を越えて
この世に姿を現した神の
忘れることのできない
着岸の場所
まだ見ぬ世界を切り開き
この世の調べを奏で始めた
出航の地点
心が還る岸辺に理由などないのだ
そこにただ浮かぶのは
光射すほうへ向かって
気付けば
ふたつでひとつになっていた
追憶の日々と
光を抱いて
やさしく撫でられる白のゆりかごだけ
海を渡り、島を生み、社をつくる

とこしえに続く長い旅路の記憶は、
寄せては返す波の詩に 胸をあずけ
途切れぬ水平線のかなたを
見つめながら
心の向こう岸にともる
かけがえのない島の灯りを
今もそっと
いだき続けている




